トコトリエノールの脳卒中研究に関するDr. Chandan Senの解説

 

パーム・トコトリエノールには、複数のターゲットを標的とするメカニズムがあるとみられ、これが脳卒中の治療や予防に役立つ可能性があります。小さな脳卒中(ミニ脳卒中)と診断された人は、新たに大きな脳卒中を起こすリスクが極めて高くなります。こうした脳卒中の高リスク因子を持つ人々が二次予防の対象となります。こうした状況において、パーム・トコトリエノールは血栓形成の予防や神経保護、そして血管新生を通じた危険回避により、役立つ可能性があります。

アスピリンには消化管出血を含む特定の合併症があることがわかっています。トコトリエノールの場合、過去。小さな脳卒中を起こした人を対象に現在実施されている臨床試験でも、有害事象は報告されていません。トコトリエノールは、すでに米国FDAによりGRAS(Generally Recognized as Safe:一般に安全と認められる食品)(GRN Notice No 307)として認定されています。

アスピリンの場合、しばらく服用を続けていても、服用を中止すると48時間で抗凝固作用が失われ始めます。これは、体内の血小板の約10分の1が毎日新しくつくられるためです。つくられたばかりの新しい血小板にアスピリンの記憶がなければ、抗凝固作用は維持されません。一方、1件の研究では、トコトリエノールを数ヵ月間摂取した結果、皮下脂肪組織にトコトリエノールが取り込まれ、その皮下組織からトコトリエノールが少しずつ血中に放出されるという、トコトリエノールの徐放性システムが認められました。さらに、トコトリエノールを10日間摂取しなかった場合にも、アラキドン酸誘発性血小板凝集の完全な抑止が認められることが示されています。

【関連文献】

血液凝固予防:

Effect of tocotrienol derivatives on collagen and ADP-induced human platelet aggregation. Mahadevappa, V.D., et.al (1991). International Palm Oil Conference-Nutrition and Health Aspect of Palm Oil.

動脈形成:

Rink, C. et.al (2011). Tocotrienol vitamin E protects against preclinical canine ischemic stroke by inducing arteriogenesis. J Cereb Blood Flow Metab.

神経保護:

Sen C.K., et.al (2000). Molecular basis of vitamin E action. Tocotrienol potently inhibits glutamate-induced pp60(c-Src) kinase activation and death of HT4 neuronal cells. J Biol Chem.

Khanna, S., et.al (2003). Molecular basis of vitamin E action: tocotrienol modulates 12-lipoxygenase, a key mediator of glutamate-induced neurodegeneration. J Biol Chem.

Khanna, S., et.al (2010). Nanomolar vitamin E alpha-tocotrienol inhibits glutamate-induced activation of phospholipase A2 and causes neuroprotection. J Neurochem.

Khanna S., et.al (2013). Loss of miR-29b following acute ischemic stroke contributes to neural cell death and infarct size. J Cereb Blood Flow Metab.

Rink, C. et.al (2011). Tocotrienol vitamin E protects against preclinical canine ischemic stroke by inducing arteriogenesis. J Cereb Blood Flow Metab.