変化の兆し

ビタミンEには化学的に異なる8種類のアイソフォームがあり、4種類のトコフェロールと4種類のトコトリエノール(それぞれα、β、γ、δのアイソフォーム)によって構成されています。しかし、ヒトの組織内に存在するビタミンEは大半がα-トコフェロール(α-T1)であり、α-T1はビタミンEの輸送を促進する肝臓内の輸送タンパク質であるα-トコフェロール輸送タンパク質(α-TTP)に対して高い結合親和性を示すことから、唯一広く研究されているアイソフォームです。

対照的に、α-トコフェロール以外のアイソフォームについては研究が進んでおらず、ビタミンEに関する文献全体のうちトコトリエノールに関する研究が占める割合はわずか1%にとどまっており、ビタミンEの研究における重大な欠落となっています。

α-トコフェロールに関する研究のみでは、ビタミンEの健康上の利点を的確に示すことはできません。なぜなら、ビタミンEのアイソフォームによって生物学的な重要性がそれぞれ異なるからです。実際にトコトリエノールは、脳、心臓、肝臓、皮膚、および免疫系の健康維持といった、トコフェロールにはみられない固有の生物学的活性を有することが報告されています。2000年代になってようやくトコトリエノールに関する研究が勢いを増し、ビタミンE研究の方向性が大きく変わってきています。